2025/09/23 20:45
甘ぁ~い果実
「果物は甘い」は今や常識となった。
場合によっては、「甘いだけ」と言っても良い様な果物も有る。
それが決して悪い事だとは思わないが、若干の寂しさを感じる。
以前、栗のミックスパフェを紹介した時に触れた果物の「酸味」について、今回は書いてみようと思う。
日本の果物、海外の果物
果物の「甘さ」に触れる時、日本の果物と海外の果物とを比較すると、その差は歴然となる。
先に触れた「果物は甘い」と言う常識は、「日本の果物は甘い」と表した方が、より正確だろう。日本の果物の甘さや品質の高さは今や世界の常識になりつつある。
では、何故、日本の果物は、他の国と比べて甘く、品質が高いのか紐解いてみよう。
水菓子
「水菓子」をご存じだろうか?
読み方はそのまま「みずがし」と読む。
「水菓子」とは勿論、果物の事だ。
日本では古くから、果物は「水菓子」と呼ばれた。
ここで言う「菓子」とはつまり、「甘味」の事で、古来より日本で果物は、「菓子」の様に、甘味を楽しむ為に食されてきた。
「干し柿」が和菓子の起源とされる程、その歴史は深い。
サラダ?デザート?
食卓や外食で果物がテーブルに並ぶのは、主に食後のデザートや、ティータイムだろう。海外、特に欧米諸国では少し装いが異なる様だ。
海外で果物は日本で言う所の野菜サラダの感覚で、食されている。
健康意識の高まる欧米諸国では、ヘルシーな食材といて、好まれている様だ。
つまり、海外での果物の立ち位置は、日本で言う野菜の延長、あるいは、野菜と同系列の感覚なのかも知れない。
この様な食文化の差が、「日本の果物は甘い」と言う共通認識を生んだのだろう。
シャインマスカット到来
「日本の果物は甘い」
この感覚を決定付けたのは、間違いなくシャインマスカットの登場だろう。
ここで説明するには及ばない程、その存在は、葡萄だけでなく、果物そのもの概念を大きく変えた。種無し、皮ごと、そして甘い。
消費者にとっての果物の懸念点を見事に払拭した。
登場時の人気は凄まじく、同じ農家が年間で5回も盗難被害にあうと言う事件にまで発展した。犯人は海外の窃盗団で、海を越えて高値で取引されていた事が、その後の調べで分かった。それ程まで、日本の果物の人気は世界的にも高い。
シャインマスカットの功罪
上記でも記した様に、シャインマスカットの登場によって、「日本の果物は甘い」という認識を世界に知らしめた事は間違いないだろう。
しかし、その反面、果物の甘さと匹敵する程の個性で有る、「酸味」は淘汰されてしまった様に思う。
シャインマスカットの登場以前と以降で、「酸味」は極端に嫌われている。
「酸味」は果実のアクセント
「酸味」は果実本来の風味を感じるアクセントだ。
「酸味」のない果実は風味が極端に弱い。
シャインマスカットが良い例だ。
確かにシャインマスカットは甘く、食べ易い。
しかし、本来、白系葡萄が持つ風味が弱く、葡萄らしさを感じにくい。
この事が、果物に対するもの悲しさを感じる。
意外かも知れないが、果物が好きな人々の間では、シャインマスカットの評価は高くない。葡萄の風味が少なく、物足りなさを感じるそうだ。
高級品になった「酸味」
職業柄多くの産地や、果物に触れる機会が多い。
そこで最近、面白い現象が起きている。
今まで、糖度保証が品質の高さの象徴とされてきていたが、近年では、「酸度」と「糖度」のバランスが保証された物が登場し始めている。つまり、酸味を程よく感じる果実の方が、希少性も、価格も高くなっている。
それ程までに、果物の「酸味」は貴重な物になりつつあるのだろう。
最早「甘さ」は品質の優位性には取るに足らない物になった様だ。
甘いだけなら、果物じゃなくていいじゃない
「酸味」は果物の大切な個性だ。
甘いだけで良いなら、果物じゃなくても良い気さえする。
最近は、触れる機会が少なりつつある果物の「酸味」。
果物を楽しむ機会が有れば、是非、個性豊かな「酸味」を楽しんで頂きたい。